魂を売らないということ⑤ 魂を入れ直すことは可能か?
2005.5~2006.3 魂を売らないということ⑤ |
ばんぶう 2005.9 日本医療企画 |
《ある程度可能だとしても、そのプロセスは非常に難解》
生活習慣の改善でさえとてつもなく困難な作業
つい先日、大学の同窓会の企画で、単に先輩と呼ぶには、今や有名になりすぎた養老孟司先生の講話をお聴きするチャンスに恵まれた。
そのなかで「血液型性格判断が本当なら、まあ一生血液型は変わらないことになっているから、性格も変わらないことになります。ナンバーワンよりオンリーワンなんていうけれど、誰も同じじゃないから誰もオンリーワンだし、逆に誰も(人間という意味では)同じなんです。無意味なことを何でもやみくもに英語で言えばいいというわけではないですよね」と、いうようなことを持ち前のユーモアの香辛料として使われていた。思わずその通りだなあと心の中で拍手をした。
よく「根性を入れ直す」とか「魂を入れ直す」などと使われるが、大体からしてそんなことは可能なのであろうか?
人の能力や性格などを評価する時に「遺伝」なのか、「環境(教育)」なのかとよく論議される。その結論は未だに出されていない。いろいろな病気の原因についても同様である。遺伝なのか、環境(生活習慣)なのか。ほとんどがその両面により規定されている。病気の場合、遺伝による病因の変換は現在までのところ不可能とされている。(今後は、遺伝子治療で変貌してくるだろうが)。
だから、病気予防には生活習慣改善が何よりも優先される。そのためには病気の認識がとても大切で、そうでないと生活習慣改善という、とてつもなく面倒で、骨折りで快適性に欠ける取り組みは持続しない。
同様に、魂を入れ直すために、遺伝子を入れ替えるのは不可能で、環境改善や教育変容により試みることになるが、それはたいへん困難な作業となる。現状の魂の問題点を深く認識しないと、やはりそんな難解で面倒なことはしないものだ。自分の魂の欠陥を知ることになる一大事件が起きるか、偉大な教育者が現われるかのどちらかであろう。
しかし、サリン事件を思い起こせば、時には人命救助を本業としてきた善良な医師を大量殺人鬼にしてしまうような「逆・魂の入れ直し」もあるから気をつけなければならない。